第29代東京大学総長就任挨拶
第29代東京大学総長就任が就任しました。
東京大学総長 濱田 純一
時代はいま、大きな変化の時期を迎えています。金融や産業が世界的規模で動揺する中で、人々の生活の基盤も揺らぎ、社会は未来への確かな指針を待ち 望んでいるように思えます。この危機が克服された後の世界は、決して危機以前の状態に戻るということではないでしょう。人類の知恵は、この危機から学び、 誰もがより快適に安心して生活できる社会の姿を生み出していくはずです。
そのような新しい世界を描き、それに至る道筋 を提示することが、いま学術に求められています。東京大学においては、人間の存在や生命現象の仕組み、さらには宇宙や物質の成り立ちに対する根源的な研 究、また、人々の社会生活を支える科学技術の開拓や制度・理論の構築など、幅広く多様な学術研究が行われています。そして、それらの研究を基盤として、未 来の社会を担うべき優れた人材が育成されています。
日本の国民に支えられる国立大学法人である東京大学は、こうした学 術研究と人材育成を通じて、未来への確かな指針を示し、国民に対する責任を果たしていくつもりです。言うまでもなく、今日私たちの生活や直面している課題 は、世界の国々との密接な関係の中で存在しています。東京大学の教育研究活動は、世界とのかかわりなしには成立しえず、また、その成果は、広く人類全体に 享受されることが期待されているものです。
社会が数多くの課題を抱えていることに対して、東京大学は、新たな学術的価 値を創造し、多様な教育と研究のプログラムを構築していくことで応えていきます。こうした挑戦を可能にする学術的な基盤の充実と発展にも、引き続き力を注 ぎたいと考えています。東京大学の学術のウィングは、現在と未来だけではなく過去にも広がっています。知の創造にとって、未来に開かれた知の可能性に対す る果敢な挑戦とともに、歴史に鍛え上げられた知の蓄積に対する鋭敏な意識は、決定的な要素です。時代にもてはやされる研究だけではなく、多彩な学問分野を 時の制約を越えて確実に維持し発展させ続けることは、学術の基盤を豊かなものとし、創造性を生み出す源となります。
知の創造と教育、社会との連携を通じて、東京大学は、日本の未来、世界の未来に対する公共的な責任を、いまこそ果たすべき時であると考えています。これからも東京大学は、豊かな構想力を備えた「世界を担う知の拠点」として、いっそうの発展を図っていく決意です。






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